こんにちは、大阪市天王寺区上本町の上本町NEWYOU歯科・矯正歯科です。
本日は総入れ歯と部分入れ歯の違いについてまとめたのでご紹介いたします。
総入れ歯と部分入れ歯の違い
高齢化社会が進む中で、歯を失った方が快適な生活を送るための手段として、入れ歯(義歯)の重要性は増しています。入れ歯には大きく分けて「総入れ歯(総義歯)」と「部分入れ歯(部分義歯)」の2種類があります。これらは見た目や構造だけでなく、使用目的、適応条件、装着感、メンテナンス方法など多くの点で異なります。本稿では、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説します。
1. 入れ歯の構造的な違い
総入れ歯(総義歯)
総入れ歯は、上あごまたは下あごのすべての歯を失った人に対して作られる入れ歯です。人工歯と、歯ぐき(歯槽粘膜)にぴったりと密着する床(しょう)と呼ばれるピンク色の樹脂部分から構成されています。歯の支えが一切ないため、粘膜と吸着力だけで入れ歯を安定させます。
部分入れ歯(部分義歯)
部分入れ歯は、失った歯が一部のみで、残っている天然歯がある場合に使用されます。人工歯と床に加えて、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)などで固定する構造を持ちます。これにより、入れ歯が安定しやすく、外れにくくなっています。
2. 装着対象者の違い
総入れ歯は、完全に歯を失った方、いわゆる「無歯顎(むしがく)」の方に使用されます。虫歯や歯周病などで全ての歯が抜け落ちた場合や、何らかの事情で抜歯を選択した場合に適用されます。
一方、部分入れ歯は、まだ健康な歯が何本か残っている方に向けて設計されます。失った歯の数に応じて入れ歯の形や大きさは異なり、1本だけの欠損から、複数の歯を補うものまでさまざまなタイプがあります。
3. 装着感・使用感の違い
総入れ歯は歯の支えがないため、歯ぐきの粘膜だけで入れ歯を支える必要があります。そのため、口の中で浮きやすかったり、ズレやすかったりすることがあります。特に下顎の総入れ歯は、舌の動きの影響を受けやすく、外れやすいというデメリットがあります。
一方、部分入れ歯は残存歯を利用して入れ歯を固定できるため、比較的安定して使用できます。ただし、クラスプをかける歯に負担がかかることがあり、場合によってはその歯の寿命を縮めることもあります。
4. 咀嚼機能(かむ力)の違い
総入れ歯では、粘膜だけで支えるため、咀嚼時に強い力を加えることが難しくなります。自分の歯に比べると、噛む力は30%程度まで低下するといわれています。また、食べ物がうまく噛み切れなかったり、噛むと痛みを感じたりすることもあります。
これに対して部分入れ歯は、残っている自分の歯の力を活かすことができるため、総入れ歯に比べてしっかりと噛める傾向があります。ただし、設計が不適切であったり、残存歯の状態が悪い場合には噛む力が不均等になり、不快感や痛みの原因となることもあります。
5. 審美性と会話への影響
入れ歯の見た目(審美性)や発音への影響にも違いがあります。総入れ歯は、特に上あごの場合、口蓋(こうがい=上あごの天井)を覆う構造になるため、最初は発音がしにくくなることがあります。また、異物感も強く、慣れるまでに時間がかかります。
部分入れ歯は、構造が比較的コンパクトで、口蓋を覆わないタイプもあるため、総入れ歯よりも異物感が少ない傾向にあります。しかし、金属のバネが見える場合は見た目に影響することがあり、審美性を重視する方には「ノンクラスプデンチャー」などの目立たないタイプが選ばれることもあります。
6. メンテナンスと耐用年数
入れ歯は人工物であり、永久に使い続けられるものではありません。総入れ歯・部分入れ歯のいずれも、数年おきに調整や作り替えが必要になります。
総入れ歯の場合、顎の骨が吸収されて形が変化することで、入れ歯のフィット感が悪くなっていきます。そのため、定期的なリライニング(裏打ち)や再製作が必要です。
部分入れ歯では、残存歯の状態が維持されるかどうかが大きなポイントです。歯周病や虫歯によって支えとなる歯が失われると、入れ歯の安定性が低下し、作り替えを余儀なくされます。
7. 費用の違い
保険診療で作る入れ歯と自費診療で作る入れ歯では、費用にも大きな差があります。保険適用の入れ歯は比較的安価で済みますが、素材やフィット感に限界があります。
部分入れ歯では、設計や金具の素材によって価格が変動しますし、見た目にこだわる場合は自費診療のノンクラスプデンチャーや金属床義歯が選ばれることもあります。
おわりに
総入れ歯と部分入れ歯は、どちらも歯の欠損を補い、生活の質を維持するために欠かせない治療手段です。しかし、それぞれに特徴や利点・欠点があり、患者の口腔内の状態やライフスタイルに応じて適切な選択をする必要があります。
自分に合った入れ歯を見つけるためには、信頼できる歯科医師との相談が不可欠です。また、入れ歯を長く快適に使用するためには、定期的なメンテナンスと、日常的なケアを怠らないことが大切です。入れ歯は単なる補綴装置ではなく、「食べる」「話す」「笑う」といった生活の基本を支える大切なパートナーです。適切な知識と管理で、より豊かな人生を送ることが可能になります。